在宅医療を通じて、その方らしい生き方を支えたい
在宅医療を通じて、
その方らしい生き方を支えたい
訪問看護師を目指したきっかけ
りんこう訪問看護ステーションで勤務して9年目、施設長になって2年目になります。
もともとは脳外科病棟やICU病棟に勤務して、急性期医療に携わっていました。1日に何十人も運ばれてくる患者さんをお受けし、やりがいを感じながらも目まぐるしく働いていました。
ある日、脳死状態で入院された男性の奥様との出会いがありました。その奥様はご本人の臓器提供カードを私に見せ、「今まで会社のために働き、私たち家族を守ってきた強い人でした。こうなった今も、きっと誰かのために役に立つことを望んでいます。家族としてはつらい部分もありますが、お願いします…」と涙を流しながら話してくれました。そのとき私は、病気ばかり見ていた自分に気がつきました。その方には家族があり、その方なりの人生があったことすら考えられなかったのです。訪問看護師なら、病気だけでなく、患者さん一人ひとりの生活に寄り添って総合的にケアできると思い、転職を決意しました。
病棟と在宅の大きな違い
急性期医療に携わっていた経験もあり、看護という仕事に自信はありました。
けれども、いざ訪問看護の現場に入ってみると、すぐに大きな壁にぶつかりました。それは、病院では初めから看護師は頼られる存在ですが、訪問看護では最初は「よそ者」で信頼すらされていないということでした。自信満々だった私でしたが、すっかり自信をなくし、どのように関わっていけばいいかすら見失ってしまいました。「こんな若い人じゃ、頼りなくて困る!」なんて言われたこともありましたね。
でもそんな私を勇気づけてくれたのも、利用者さんでした。「また来てね。待ってるね。」この一言で、利用者さんのためにできることはないか、自分に足りないものは何かを考えるきっかけとなり、スキルアップを図ることを決意しました。がんや難病の利用者さんも在宅で過ごされることが多くなっていましたので、1年間働きながら、学校に通い緩和ケア認定看護師の資格を取りました。
訪問看護師に求められていること
日々仕事している中で、何より私が大切にしていることは、利用者さんやご家族の方と「自分が専門職の前に一人の人間として向き合う姿勢」です。高齢の方も多く、人生の大先輩の方ばかりです。専門職だからと偉そうにアドバイスしたとしても、利用者さんやご家族からは聞き入れてもらえません。私たち看護師に何を求めているのか、何が問題となっているのか、問題解決するためにどのようにしていけばよいかを一緒に考えることが大切です。訪問の時に、120%全力の気持ちと姿勢で向かってはじめて「本当に親身になってくれているんだな」と少しずつ心を開いてくれます。今でも自分の看護はこれでよかったのか、と日々勉強です。決まった答えがなく、訪問看護は深い。難しいけれど、そこが魅力でもあります。
在宅での看取りについて
今までは病院で最期を迎えるというのが当たり前でした。でも、住み慣れたご自宅で最期を迎えたいという方が多く、そのご要望に対応できていないというのが現状です。当ステーションでは、緩和ケア認定看護師がいるという強みを活かし、在宅での看取りにも力を入れています。
「どのように最期を迎えたいか」を考える前に、「どのように最期まで生きるか」を考えています。歩んできた人生の最終章をその人らしく「生ききる」ことを支える、ということを大切にしています。 ご家族の支えはもちろん大切ですが、いざその時を迎えるとご家族はうろたえてしまいます。そんな時でも、やはりプロとしてこの大事な部分を支えられるのは、ご家族でもなく、医師でもなく、看護師だと思っています。
終末期にある方は、体の機能が衰えるのを待つばかり…と思われがちですが、残されている「できること」、いわゆる残存機能を見出して、そこに目を向けるようにしてあげることも看護師の役割。その小さな積み重ねが大切です。
心に残っているできごと
がんを患い自宅で療養されている奥様を看取るご主人からの相談がありました。
話を聞くと、奥様へ「迷惑ばかりかけてしまったが、愚痴一つ言わずに見守ってくれた妻に何かできることを考えたい」という内容でした。
それで、奥様には内緒で結婚記念日をサプライズでお祝いしようということに。当日は、息子さん、娘さん、お孫さんも巻き込んで部屋の飾りつけをし、ご主人も少しおしゃれな格好で登場したり。もちろん奥様は、とても喜んでくれていました。
奥様が亡くなられた今でも、そのご主人は訪問看護ステーションの事務所に顔を見せてくれたり、自宅になったみかんを持ってくださり一緒に食べたり。今では、お孫さんの成長を一緒に楽しんでいます。時には、私の悩みも聞いていただいています(笑)。
訪問看護師を目指す方に向けて
お相手するのは、病気や障害を抱えながらも生活者として毎日を過ごす利用者さんです。それぞれ異なった環境、異なった価値観で暮らす人と関わり合い、できるだけ穏やかに人生の最終章を迎えられるよう訪問看護師は共に考え、共に悩み、寄り添います。その人らしさを考えることは、まず働いている看護師自身の自分らしさとは何かを知る必要があります。そのためには、看護に携わる私たち自身も自分らしくイキイキと働くことが大切です。そして、「ここだけは、他人に絶対に負けない!」と思える強みを見つけてください。「コミュニケーションが得意」「4人の男の子を子育てで培った体力がある」だっていい。いつだってその自信が支えになります。働く上で自分らしさを出せるようになれば、職場は輝くための場所になってくると思います。
見学会&インターン実施中!
採用試験とインターンシップを同日で行うことが出来ます。一般病床、回復期リハビリテーション病床、療養病床の他、外来や手術室なども曜日により調整が可能です。当院は、様々な健康回復過程、領域を持ち、地域の暮らしに溶け込み、寄り添う看護活動を行っています。お会いできる事をうれしく思います。